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「Piece」

OECDxWasedaUによる、インタビュー連載

【Vol.1】OECD東京センター所長 村上由美子

「先入観はいらない、ビジョンを持って」

OECD経済協力開発機構)日本加盟50周年の今年、東京センター所長として活躍する、村上由美子氏にインタビューを行いました。村上所長は、昨年9月、日本人女性として、また民間企業出身者として、初の所長となりました。上智大学卒業後、スタンフォード大学院で国際関係を学び、国連職員、ハーバード大学院、ゴールドマン・サックスを経て、現職に就きました。

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 Q. なぜ国際機関を目指そうと思ったのか、お聞かせ下さい。

村上所長:私の学生時代は、冷戦真っ只中でした。高校生の時、テレビや新聞で毎日報道される国際情勢を目にし、「これは何か大変な事が起きている。」という思いが働きました。ソ連、アメリカ、そして狭間にある日本という関係を見て、冷戦を始めとした、国際情勢の助けになりたいという、大きな軸が出来ました。そのような思いで、大学ではロシア語を専攻し、アメリカの大学院では、国際関係を学びました。

 

Q. どんな学生時代を送りましたか?

私はバックパッカーでした。学んだロシア語で何かできないかと思い、実際にソ連には3、4回行ったと思います。観光だけではなく、ロシア語を使って自らが現地で観光ガイドのアルバイトをしました。生身のソ連を見て、ソ連の問題が経済的、社会的に大きなインパクトを持つことを実感しました。そのような体験の積み重ねで、国際関係を学びたくなり、後に国際機関というキャリアを目指す土台となりました。

 

Q. 国連ゴールドマン・サックスでどのような仕事をなさっていましたか? また国連から民間にキャリアを移された経緯もお聞かせ下さい。

国連では、まず最初に中米のバルバドスへ行きました。信用金庫を作る経済プロジェクトを担当しました。そこで、世の中の経済において、お金を流すためには、国連ODA(先進国政府が途上国を支援する資金、技術提供のこと)だけでなく、民間も自らが歩かなければならないと感じました。そのために、私自身が民間の経済を肌で感じたいと思うようになりました。ニューヨークに戻った後、国連を去り、ハーバードのビジネススクールに行き、卒業後はゴールドマン・サックスに入社し、ロンドン、ニューヨーク、東京オフィスで働きました。経済における、政府や国際機関の役割だけでなく、民間の仕組み、民間のインセンティブも知る事が出来ました。この経験が、今の立場でも、官公庁や政府と協議する時に、民間の視点も提供できるといったバリューとして役立っています。

 

Q. 世界の中心となる国際機関、投資銀行とキャリアを積む中で、大切にされてきた事はありますか?

2つあります。1つは、常に楽観的であることです。様々な国、立場の人が働く環境であり、しかも金融は流動が速いので、いちいち必用以上に心配しません。目の前にある事を、結果が出るようにこなしていく、失敗してもやり続けることを大切にしています。2つ目は、ビジョンを持つ事です。結果を出していく過程で、軸をぶらさず、次のステップを考えてきました。

 

Q. 世界各国の方々と一緒にお仕事をされる中で、心がけてきた事はありますか?また、国際機関で感じた日本人の課題もお聞かせ下さい。

私は、ゴールドマン・サックスでチームのボスをやっていた時、必ずダイバーシティを意識してきました。実際に、ダイバーシティはビジネスデシジョンに大きな影響を与えます。異なった考え方、立場、背景を持つ人でチームを構成し、広いプールを作る事で、奇抜なアイデアが生まれました。

また、日本人の課題については二点あると感じました。1つは、アピールが足りないことです。色々な国の人と働く時、主張や交渉をしなければ目立てません。2つ目は、コミュニケーション力です。実際、低い英語力も日本人の世界進出の妨げになっています。「日本人だから英語は出来ない」という思い込みを取り払って、メンタリティ強く、リーダーシップを取っていかなければなりません。

 

Q. 日本人女性として初のOECD幹部になり、憧れる女性も多いと思います。今までのキャリアにおいて、女性として大変だった事はありましたか?

私自身は子供を産んだ時、ゴールドマン・サックスの同じチームの女性ボスが、出産しても当たり前のようにすぐに復帰し、仕事をしているのを見ました。ですので、目の前にお手本がいた事で、私も安心して子育てと仕事を両立できました。

女性の課題としては、男性に比べて交渉力が低いと感じました。私がゴールドマン・サックスでチームのボスをやっていた時、ボーナスの交渉にくるのは必ず男性でした。国際的職場で評価されたいのであれば、アピールしなければなりません。そういった点での違いは感じました。

一方で、女性だから○○、男性だから○○、といった先入観は、世の中には存在します。例として、ニューヨークフィルでは、採用オーディションの際に、姿が見えないよう、ブラインド・オーディションを実施した後、女性の団員が増えたそうです。つまり、今までは、「女性だから腕の力が弱いだろう」などといった先入観があったということです。先ほども話した通り、ダイバーシティは収益や成果に大きな影響を持ちます。男性も女性も、先入観を一旦捨てた方がいいと感じています。

 

Q. これから国際的に活躍したい学生に、アドバイスをお願いします。

意識して身につけた方が良い事は2つあります。1つは、コミュニケーション力です。国際機関や、民間でも世界の人々と働くには、意思疎通していかなければなりません。その際、英語は義務です(笑)。ただし、コミュニケーション能力と、英語力は、イコールではありません。英語を身につけていただき、世界で堂々と発言できる日本人学生が増えればと願っております。 2つ目は、専門性です。国際機関でも、民間でも、「何のプロフェッショナルか」を明確にした方が、採用されやすいと思います。総合職があるのは日本だけです。総合職として働くにしても、自分が武器として持つ専門性がある方の方が、世界で求められると思います。

 

村上所長ご自身の今後のビジョンは、5月にOECDのパリ本部で行われる閣僚理事会で、安倍首相がインパクトを出せるよう、OECD東京センター所長として準備を万全にする事だそうです!

村上所長、ありがとうございました!